雨漏りしやすい屋根の形状を解説
2024/01/04
屋根にはさまざまな形状がありますが、雨漏りのしやすさにも違いがあります。
そのため、雨漏りしやすい屋根と雨漏りに強い屋根はどのような形状なのか知りたい方もいるかと思います。
この記事では、雨漏りしやすい屋根の形状と雨漏りに強い屋根について紹介します。
雨漏りと屋根の形状の関係を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
屋根が雨漏りを防ぐ仕組み
ここでは、まず屋根が雨漏りを防ぐ仕組みについて解説します。
傾斜がある屋根の場合は、上から、瓦やスレート、ガルバリウムなどの金属屋根などの各種屋根材、防水シート、野地板という構造になっています。
屋根材は一次防水として機能しますが、雨を完全には防げません。
屋根材は密閉されていないため、わずかな隙間を設けることで、入り込んだ雨が滞留せずに排水する仕組みとなっています。
それでも排出できなかった雨や、破損などで内部に侵入した雨水を防ぐのが防水シートです。
そのため、雨漏りを防ぐためには防水シートは重要です。
雨漏りは、一次防水と二次防水がセットで機能することで防ぐことができます。
もし屋根材が劣化して大量の雨水が防水シートに流れ込むと、防水シートが劣化しやすくなります。
また、防水シートを屋根に固定している釘穴から雨水が侵入することもあり、野地板が腐食して雨漏りが発生します。
一般的に、防水シートは屋根材よりも耐用年数が短いため注意が必要です。
雨漏りしやすい屋根とは?
ここからは、雨漏りしやすい屋根の特徴について解説します。
複合的な屋根
屋根はひとつの種類の屋根だけでなく、複合的な屋根になっているケースがあります。
建物が複雑になると、それだけ屋根も複雑になり、接合面や役物が増えてしまうため雨漏りリスクが高くなります。
また、屋根で凹部になっている場所は雨水が集まりやすくなります。
このような場所には、谷板金(谷樋)という役物が施工されますが、屋根の樋のような役目を果たすため雨に触れる機会が多いため、雨漏りしやすい場所となっています。
勾配が緩い屋根
雨は高いところから低いところへ流れます。そのため、勾配が急な屋根は勢いよく雨水が流れて排水しやすく、勾配が緩い場合は流れが遅いため雨漏りしやすくなります。
屋根材によって施工できる勾配は決まっていて、0.5~1寸の勾配ではガルバリウム鋼板立平葺きしか施工できません。
デザインのために緩い勾配を選択すると、雨漏りのリスクを高めることになります。
軒の出が少ない、もしくはない屋根
近年では、片流れの屋根や箱型のキューブ型住宅のようなスタイリッシュなデザインが好まれる傾向にあります。
ただし、このような屋根には軒の出が少ない、もしくはまったくないケースもあります。
軒の短い屋根は雨漏りが発生するリスクが非常に高くなっています。
軒がないと雨が外壁に直接当たる部分が大きくなり、外壁の劣化も早まります。また、屋根と外壁の取り合い部分のシーリング材の劣化も早くなるため、雨漏りのリスクが高いと言えます。
日本住宅保証検査機構の調査によると、軒がない家は軒のある家より雨漏りのリスクが5倍高いとされています。
雨漏りに強い屋根の形状について
ここからは、雨漏りに強い屋根の形状について紹介します。
切妻屋根
切妻屋根は、日本の家屋で一番オーソドックスな屋根で、雨漏りに一番強いとされています。
切妻屋根は、屋根が二面あり頂点の棟で閉じているのが特徴で、V字を逆にしたような形状をしています。
屋根には傾斜があるため、雪や雨を二面の屋根で流すことができます。
日本で昔からある屋根で、日本だけではなく世界各地で見られる屋根の形状です。
雨漏りは、異なる部材が接する部分や屋根と屋根が接合する部分などの継ぎ目から雨水が侵入することで発生します。
そのため、接合部が少なく棟が一つしかない切妻屋根は、雨漏りのリスクが低いといえます。
切妻屋根は、大棟と呼ばれる棟部分のメンテナンスが重要です。
大棟は屋根が接合する部分を固定・保護していて、この大棟を保護する棟板金の釘のゆるみや変形が起こったり、漆喰が剥がれるなどの経年劣化があると不具合が発生するため、注意が必要です。
寄棟屋根
寄棟屋根は、屋根が四面あり切妻屋根に屋根を足したような形状が特徴です。
四面で雨水を排水することが可能で、複雑な形状でないため、比較的雨漏りに強い屋根といえます。
寄棟屋根も切妻屋根と同様に昔からある屋根で、神社仏閣などでも使用されています。
屋根が四面あるため、軒の出があれば、風雨を防ぎ雨水も四つに分散されるため耐久性も高くなっています。
ただし、切妻屋根よりも構造が複雑なため、施工コストはやや高くなっています。
寄棟屋根は、頂点の大棟以外に屋根が接合する隅棟が四つあるため、その分だけ雨漏りのリスクが高くなっています。
さらに、大棟と隅棟が交わる「かき合い」部分は、雨漏りが起こりやすい場所です。
そのため、この部分の定期的なメンテナンスが重要です。
方形屋根
方形屋根は、寄棟屋根とよく似た形状の屋根で、棟の代わりに屋根があわさる頂点の部分が点になっています。
この頂点のかき合いから同じ角度で屋根が下っていく、ピラミッドのような形状が特徴の屋根です。
方形屋根は全ての屋根が三角形で構成されていて、屋根が四面あるため耐久性があり、同じ角度で屋根が配置しているため構造的に安定しています。
方形屋根は、寄棟屋根と同様に隅棟とかき合い部分が雨漏りのリスクが高い場所です。
片流れ屋根
片流れ屋根は、屋根が一面で片方に傾斜していて、立方体を斜めにカットしたような形状が特徴の屋根です。
スタイリッシュな見た目であるため、近年人気があります。
形状がシンプルな屋根は雨漏りに強いとされていますが、築10年以内の雨漏りの7割は片流れ屋根で発生しているというデータもあります。
その理由としては、片流れ屋根はデザインを重視する傾向があるため、軒の出がない屋根が多く、その結果として雨漏りのリスクが増大してしまいます。
片流れ屋根は屋根が一面のみで、傾斜の高い方が棟部となります。この棟部で発生する雨漏りが最も多くなっています。
片流れ屋根では、雨水は傾斜が低い方に、棟から外壁に流れます。
この棟部から流れる雨水が、伝い水となって下地と破風板の隙間や、軒天と外壁の取り合い部分から侵入し、雨漏りが発生してしまいます。
片流れ屋根は、雨樋の負担が大きいため定期点検が重要です。
また、雨漏りを予防するために、棟部と外壁の取り合い部分を透湿ルーフィングに変更することで雨漏りを防止できます。
陸屋根
陸屋根は、傾斜がなく平らな屋根のことです。
ただ、傾斜がない陸屋根ですが、雨水を排水するために多少の勾配がつけられています。
この陸屋根は、ビルやマンションなどの鉄骨コンクリート造の屋上に設置されることが多い屋根ですが、戸建て住宅でも採用されています。
陸屋根は屋根に傾斜がないため、屋根材を施工する代わりに、ウレタン防水、FRP防水、シート防水など各種防水工事を行うことで雨漏りを防止しています。
この防水は経年劣化するため、メンテナンスをしていないと雨漏りのリスクになります。
ウレタン防水の場合は、表面を保護するトップコートの再塗装を7年~10年に一度行うことで耐用年数が15年程度になります。
FRP防水やシート防水の場合は、耐用年数は約20年です。
もし防水性がなくなったまま放置してしまうと、防水層から雨水が侵入して雨漏りが発生しやすくなります。
入母屋屋根
入母屋屋根は、屋根が四面ある寄棟屋根の上に、三角形の切妻屋根が載ったような形状をした屋根です。
瓦葺きの屋根でよく見られ、伝統と格式が感じられる重厚な造りが特徴です。
入母屋屋根は、平安時代から格式高い屋根として普及していて、貴族の邸宅や神社仏閣などで採用されていました。
入母屋屋根は形状が複雑なため施工費用が高いため、最近では減少傾向にあり、技術を持つ職人も減少しているため問題となっています。
入母屋屋根は通気性がよく、断熱性に優れますが、複雑な形状であるため接合面が多く、雨漏りのリスクは高くなっています。
入母屋屋根には、頂点の大棟、大棟から傾斜に沿って軒へ下る降り棟、隅棟など多くの棟が存在するため、雨漏りの発生リスクがその分だけ高くなります。
特に、降り棟と隅棟が交差する部分は雨漏りが多くなるため、定期的なメンテナンスが必要です。
また、形状が複雑であるため、雨漏りが発生した際に特定が難しくなります。
招き屋根(段違い屋根)
招き屋根とは、切妻屋根の片方の屋根を長くしてアシンメトリーにした形状の屋根です。
この中で、屋根が段違いになっているものを段違い屋根と呼んでいます。
段の壁面に窓を設置できるため採光がとりやすく、屋根裏の空間がとりやすいという特徴があります。
見た目がおしゃれで個性的な屋根であるため、現在新築での施工が増えています。
ただし、屋根の構造上、断熱や換気をしっかり行わないと夏は暑くなり、結露が発生する可能性が高くなっています。
招き屋根は、片流れ屋根が二つある構造であるため、風で煽られる部分から雨が侵入しやすく、段になっている屋根と外壁の取り合い部分も雨漏りが発生しやすい場所です。
この取り合い部分のシーリングが劣化すると雨漏りが発生しやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。
まとめ
ここまで、雨漏りしやすい屋根の形状と雨漏りに強い屋根の形状について解説しました。
現在さまざまな形状の屋根が存在し、雨漏りのリスクは異なります。
雨漏りしやすい屋根は、構造が複雑な屋根や勾配が少ない屋根となっています。
一方で、雨漏りに強い屋根は、構造がシンプルで勾配がある屋根となっています。
屋根はデザインで決めることが多いかもしれませんが、雨漏りのリスクが異なるため、雨漏りの観点から選ぶことをおすすめします。