雨押え板金とは?役割や修理方法を解説
2023/11/01
住宅の修理やリフォームを検討する際に、見積項目の中で「雨押え(あまおさえ)板金」という言葉を目にしたことがある方もいらっしゃると思います。
雨押え板金は業界の専門用語で一般にはあまり知られていない言葉ですが、建物を雨水から守る重要な建築部品です。雨押え板金が劣化したり取り付け方が悪かったりすると室内の壁や天井に雨漏れが発生して、大切な住宅の劣化を早めてしまうこともあるのです。
本記事では、雨押え板金についての基本的な知識とその役割、経年劣化でチェックするポイントなどについて解説します。
雨漏りの修理や屋根・外壁のリフォームを検討されている方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
雨押え板金とは?
雨押え板金は、建物の下屋(下層階の屋根)と外壁が取り合う位置に使用される金属部材です。
ここでは、雨押え板金の基礎知識について解説します。
住宅に重要な「雨仕舞」
雨の多い日本では住人を雨風から守り快適な生活を送れるようにするということが、住宅の重要な役割のひとつです。毎年季節によって梅雨の長雨や台風による強風雨があり、近年では突然のゲリラ豪雨も見られるようになっています。住宅がさらされる気象条件はますます厳しくなっていると言えるでしょう。
そういった悪条件にさらされても、建物の内部に雨水が入らないようにする外装部材や施工方法の工夫を「雨仕舞(あまじまい)」と言います。
雨押え板金が使用される部位
2階建ての住宅では、2階の外壁と1階の屋根の間に板状の金属部材が見られます。その外壁と下屋の取り合い部分に使用されている部材が雨押え板金です。
下屋根と外壁の取り合い部分は住宅の雨仕舞の弱点であり、雨漏りを防ぐための正しい納まりと施工技術が要求される部分です。外壁を伝う雨水を確実に下屋に流し、屋根を流れる雨水が室内に浸入することを防ぐために、雨押え板金は重要な役割を果たしています。
この部分を防水のために安易にコーキングなどで固めてしまうと、適切な排水ができずにかえって室内への雨漏りを招くこともあります。雨漏りを防ぐための雨押え板金の形状と施工方法には施工会社のノウハウが詰まっており、職人の腕の見せどころとも言えるでしょう。
雨押え板金の役割
雨押え板金には、雨漏りを防ぎ住宅を長持ちさせるための下記の4つの重要な役割があります。
①外壁表面を伝う雨水を下屋の上に流す
②外壁の内側に入った雨水を下屋に排水する
③強風時に屋根に吹き上がる雨水を室内に入れないようにはね返す
④外壁裏の通気を適切に確保する
雨押え板金と外壁の間に隙間が見えることがあり、施工不良ではないかと不安になる方もいらっしゃると思います。しかし、それは排水や通気のために必要な隙間であり、正しく施工がされていれば心配はいりません。
外壁のコーキングが切れたり、サッシから漏水するなどして外壁の裏側に雨水が回ったときには、その雨水を雨押え板金と外壁の隙間から排水することによって室内への雨漏りを防ぎます。
また、木造住宅の場合は外壁の通気が必要です。そのため、雨押え板金と外壁の隙間から外壁の裏側に通気を取る必要があります。この通気が無いと下地の木材が腐食して外壁が浮いてしまったり、壁内結露で構造木材が腐食して建物の寿命を縮めてしまうこともあるため、建物にとって非常に重要です。
雨押え板金の施工方法
雨押え板金が施工される部分は屋根と外壁を構成するさまざまなパーツが重なり合う部分であるため、施工手順と部材の前後関係が非常に重要です。
施工業者や建物工法・仕様によって違いはありますが、雨押え板金の基本的な施工手順は以下の通りです。
①雨押え板金を施工する前に、屋根下地のルーフィングを余裕をもって外壁側に立ち上げておきます。その上に屋根材を施工しますが、壁際には「捨て谷」という裏当て板金を施工します。
②下屋の施工が完了したら、雨押え板金の下地を施工します。下地は無垢の杉材等が多く使用されますが、近年では腐食対策として木樹脂やアルミ材を使用するケースもあります。
③下地が施工されたらその上に雨押え板金を釘やビス等で施工し、外壁の防水シートを雨押え板金の上にかぶせます。防水シートは、防水テープで雨押え板金の立ち上がりにしっかりと密着させます。
④雨押え板金の立ち上がりが隠れるように上層階の外壁材を施工します。その際に外壁は雨押え板金に載せるのではなく、通気のために15〜20mm程度の隙間を設けます。
雨押え板金の劣化と修理方法
雨押え板金も他の住宅部材と同様に、経年により劣化していきます。
ここでは雨押え板金の劣化のチェックポイントと修理方法について解説します。
雨押え板金の劣化
・固定する釘の浮き、抜け
雨押え板金を固定している釘が浮きや抜けが見られる場合は要注意です。釘穴から雨水が浸入するだけでなく、強風にあおられて雨押え板金がめくれ上がってしまう危険があります。
・板金の腐食穴あき
板金が錆びて腐食し、穴が開いてしまうこともあります。特にカラー鉄板の場合は表面の塗装が劣化すると腐食が一気に進行します。沿岸地域の場合は潮風の影響による塩害腐食も考えられます。
・下地木材の腐食
釘の抜けや腐食による穴から雨水が浸入して雨押え板金の下地が腐食してしまうと、固定している釘やビスが効かなくなり外れてしまう可能性があります。腐食の進行は外観からは分からないため、疑いがある場合は雨押え板金を開いて点検する必要があるでしょう。
これらの劣化を放置すると雨漏りの原因になります。
屋根上の点検や修理は滑落の危険をともなうため、工務店やリフォーム会社、外装修理専門業者に点検および修理をしてもらうことをおすすめします。
雨押え板金の修理方法
釘の浮きや抜けが見られる場合は、そのまま打ち込んでも当初の強度は得られません。太めのスクリューネイルやビスへの打ち替えが必要となります。その場合でも防水性を高めるために防水パッキン付きのものを使用するようにしましょう。
打ち込んだ上にコーキングを盛ったりパッチ板金を被せるとさらに安心です。
板金の腐食が見られる場合は、穴が開く前であれば上塗り塗装で錆の進行を食い止めることができます。板金を上からもう一枚被せるカバーリング工法も有効でしょう。
下地木材の腐食の場合は、雨押え板金を取り外して更新する必要があります。雨押え板金を外すためには取り合い部分の外壁を取り外さなければならないため、大がかりな工事となってしまいます。そのため、大規模リフォームの際に同時に実施するのが現実的でしょうか。
屋根や外壁リフォームの際の雨押え板金の処理方法
屋根や外壁をリフォームする際には、既存の雨押え板金をどのように取り扱うかが非常に重要です。
正しい納まりと施工方法を守らないと、リフォーム後に雨漏りを引き起こしてしまうこともあります。
塗装工事の場合
屋根や外壁の塗装リフォームの際には、事前に雨押え板金の劣化度合いを十分にチェックしましょう。先述のような釘の浮きや板金の穴あき、下地の腐食を放置してそのまま塗装しても、見た目がきれいになるだけで防水性能の劣化がそのまま放置されることになりかねません。
屋根の葺き替えの場合
屋根の葺き替え工事をする場合は、雨押え板金を取り外して施工する方法が一般的です。
下屋に取り合う外壁を剥がして下地材ごと更新する場合と、外壁を外さずに既存の上から新しい雨押え板金をカバーリングして納める場合があります。
屋根カバー工法の場合
既存の屋根の上に新しい屋根材をかぶせるカバーリング工法を採用する場合は、雨押え板金もカバーリングで納めることになります。
既存の外壁の上に雨押え板金の立ち上がりを固定することになりますが、表面的な防水コーキングだけでなく裏側にも二重にコーキング処理を行うことで外壁を伝う雨水を確実に下屋に流します。
その場合でも、外壁の裏側に回った雨水の逃げ道は作っておく必要がありますので、屋根との取り合いはふさがないような配慮と納まりの工夫が必要でしょう。
まとめ
ここまで、住宅の雨仕舞で非常に重要な部材である雨押え板金について解説してきました。
本記事で解説したチェックポイントを参考にしていただき、雨押え板金の劣化が見られたら早めに工務店やリフォーム会社に点検を依頼しましょう。
雨漏りや屋根の修理は、普段馴染みがないため、いざ修理を頼もうと思ったらどこに頼んでいいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか?
伊藤工芸は静岡県浜松市を中心に、雨漏り修理を得意とする地域密着の工務店です。浜松市で雨漏り修理や屋根のことでお悩みの方は、伊藤工芸までお気軽にご相談ください。