防災瓦とは?種類やメリット・デメリットを解説
2024/11/25
地震の度に、瓦屋根の被害が報道されることから、瓦葺きの住宅をお持ちの方の中には、安全性について心配される方も少なくありません。そのため、軽量なスレート屋根やガルバリウム鋼板を選択する傾向が高まっていました。
しかし、新しい技術により、軽量化と耐震・耐風性を両立させた「防災瓦」が注目を集めています。この記事では、防災瓦の特徴やメリット・デメリット、主要メーカーなどを詳しく解説していきます。
瓦屋根の耐震性について
「瓦屋根は地震に弱い」という声をよく耳にしますが、実際はどうなのでしょうか。
確かに屋根が軽いほうが建物への負担は少なくなりますが、それは耐震性を左右する要因の一つに過ぎません。実は建物の耐震性を決めるのは、主に建物自体の構造強度なのです。
古い耐震基準で建てられた住宅では、柱や壁の強度不足が地震被害を大きくする原因となっています。現行の耐震基準を満たす住宅であれば、瓦屋根でも十分な耐震性を確保できます。
ただ、地震や強風の際に個々の瓦が外れて落下する可能性は依然としてあります。この課題に対する解決策として注目を集めているのが「防災瓦」です。
防災瓦のメリット
優れた耐震・耐風性能
特殊な連結システムと個別の固定方式により、地震や強風時の瓦のズレや落下を効果的に防止します。各瓦は野地板にしっかりと固定され、瓦同士も強固に結合されています。
長期的な経済性
約30年という長寿命で、その間メンテナンスフリー。定期的な塗装も不要なため、維持費用を抑えることができます。
軽量設計
従来型と比べて大幅な軽量化を実現。最新モデルでは重量が半減しているものもあり、建物への負担を軽減します。
高い防水機能
独自の設計により雨水の排出効率が向上。また、通気層の確保により結露の発生を抑制します。
快適性能
粘土瓦の特性を活かした優れた遮音効果で、雨音を軽減。さらに、蓄熱性能により室内温度の安定化に貢献します。
防災瓦のデメリット
費用について
通常の屋根材に比べて、最初にかかる費用は少し高めになります。これは、材料費だけでなく、取り付けに専門的な技術が必要なためです。ですが、30年以上にわたってお手入れの必要がないので、長い目で見ると家計にやさしい選択といえます。
強い衝撃への対応
特別な取り付け方法で瓦が落ちるのを防げますが、とても強い衝撃を受けた場合には、割れてしまう可能性が残ります。
重さについて
以前より軽くなってきていますが、金属でできた屋根と比べるとまだ重さがあります。とはいえ、今の建築基準で建てられた家であれば、重さが問題になることはほとんどありません。心配な方は、専門家に見てもらうことをお勧めします。
商品ごとの比較
ここからは、各メーカーの代表的な防災瓦製品をご紹介します。
それぞれに特徴があり、住宅のスタイルや予算に応じて選択できます。
ケイミュー
(画像引用:KMEW株式会社)
大手企業のクボタとパナソニックから生まれた建材メーカー。
総合的な建材製造を展開し、その革新的なデザインは数々の賞を受賞しています。
【ルーガ(ROOGA)】
独自の気泡構造技術により、従来の瓦重量の50%以下を達成。耐衝撃性に優れた特殊な構造で、高い耐久性を実現しています。
「グラッサコート」という特殊コーティングで、美しい外観を長く保つことができます。
鶴弥
(写真引用:株式会社鶴弥)
明治20年から続く歴史ある瓦メーカー。
伝統技術と革新的な開発力を併せ持ち、数々の特許技術を有しています。
【スーパートライ110シリーズ】
国内粘土瓦市場でトップシェアを誇る人気シリーズ。「スーパーロック工法」により優れた耐風・耐震性を実現しています。
モダンなフラットデザインから、地中海風の明るい色調まで、様々な住宅様式に対応可能です。
【エース/スーパーエース】
日本の伝統美を追求した和瓦シリーズ。独自の接合構造により高い耐久性を確保し、二重構造の水返しで雨水対策も万全です。和風建築の品格を際立たせる逸品です。
株式会社丸惣
(写真引用:株式会社丸惣)
石州瓦の伝統を受け継ぐ島根県のメーカー。
原料となる粘土の採掘から一貫生産を行い、伝統工法を大切にしながらも、防災瓦や洋瓦といった現代のニーズに応える製品を展開しています。
【TSルーフ53B】
寒さや塩害に強いという石州瓦の特性はそのままに、瓦同士をしっかり合体させる独自の構造で耐風性の高さを維持。
また、三段水返しや二段水切りを設けて、雨水の逆流を防ぎます。
三州野安株式会社
(画像引用:三州野安株式会社)
三州瓦の伝統を受け継ぎ、現代のニーズに応える製品開発で知られるメーカーです。
革新的な技術と職人の技を組み合わせた製品づくりに定評があります。
【セラマウント】
2つの山型が特徴的な洋風デザインで、モダンな住宅との相性が抜群の製品です。
独自の防水システムを採用し、なだらかな屋根でも高い防水性能を発揮します。
【三州陶器瓦和形】
日本の伝統美を現代に活かした和瓦デザインを採用。
特殊なガラス質コーティングにより、優れた防水性と格調高い外観を実現。緩い勾配の屋根材としても使用できます。
栄四郎瓦株式会社
(画像引用:栄四郎瓦株式会社)
200年以上の歴史を誇る瓦の専門メーカー。
独自の技法で作られる銀色のいぶし瓦は、国内トップクラスの生産量を誇ります。
三州瓦業界の重鎮として高い評価を得ています。
【プラウドプレイン】
現代建築に調和するフラットデザインが特徴の防災瓦です。
カラーバリエーションが豊富で、ベーシックトーンから北欧テイスト、伝統的ないぶし瓦の風合いを活かした高級ラインまで取り揃えています。
ソーラーパネル対応モデルも用意されており、環境に配慮した住宅づくりにも対応可能です。
緑窯業株式会社
(画像引用:緑窯業株式会社)
淡路瓦の伝統を受け継ぐ老舗メーカー。特に淡路いぶし瓦の製造においては、国内最大のシェアを誇っています。
【ナイスだぜガッチリくん】
伝統的な和瓦のデザインを活かしながら、最新の防災技術を組み込んだ製品です。
瓦と瓦の間に特殊なツメ構造を設け、強固な結合を実現しています。
独自開発の「縦桟工法」により、横桟木と縦桟木の両方で固定することで、地震や強風による脱落を防いでいます。
まとめ
瓦屋根は長い歴史の中で日本の住宅文化を支えてきた一方で、地震や台風などの災害時にはその耐久性が懸念されることもあります。しかし、防災瓦の登場により、従来のデザインや機能性を活かしながら、安全性と耐久性が大幅に向上しました。軽量化や耐震・耐風性能の進化、さらにはメンテナンスフリーの利点により、防災瓦は現代の住宅においても非常に魅力的な選択肢です。
本記事では、防災瓦の基本的な特性から、具体的な製品の比較まで幅広くご紹介しました。リフォームや新築を検討する際には、建物の構造や予算、デザインの好みに合った製品を選ぶことが重要です。専門業者に相談しながら、最適な瓦を選ぶことで、長く安心して暮らせる住まいを実現してください。
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