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見逃すと危険!アスベスト含有屋根の簡単な見分け方と安全対策とは?

2024/10/25

今回は、アスベストを含む屋根材について解説します。

お住まいの屋根にアスベストが含まれているかどうか、すぐに判断できるでしょうか?アスベストは、その有害性が明らかになり、発がん性などの健康リスクが指摘されたため、2004年10月以降はアスベストを含む屋根材の製造が中止されました。しかし、2004年以前に建てられた建物、特にスレート屋根を使用した住宅では、アスベストが含まれている可能性があります。

ただし、アスベストが含まれている屋根材があるからといって、すぐに危険というわけではありません。アスベストは、屋根材が劣化して粉じんが飛散しない限り、直接的な健康リスクは低いとされています。しかし、将来的に屋根のリフォームや修理を行う際、アスベストを含む屋根材の取り扱いには特別な処置が必要となり、そのため工事費用が高額になる可能性があります。今からその点を理解しておくことが大切です。

今回は、アスベストを含む屋根材の見分け方や代表的な種類について詳しく解説します。また、アスベストを含む屋根材のメンテナンス方法についても触れますので、ぜひ参考にしてください。

アスベスト含有屋根材の見分け方は3つ

アスベストを含んだ屋根材かどうかを見分けるためには、いくつかのポイントがあります。これから紹介する3つのポイントは、確定的なものではなく、あくまで判断材料となるものです。アスベストの有無を確認するには、複数の要素を総合的に判断する必要があります。自宅の屋根材がアスベストを含んでいるか心配な方は、以下の方法を参考にしてみてください。

アスベストのロゴで見分ける

まず1つ目は、屋根材にアスベストを示すロゴがあるかどうかです。アスベストが含まれている製品には、通常「a」マークが刻印されていることがあります。この「a」マークが見つかった場合、その屋根材にはアスベストが含まれている可能性が高いです。ただし、すべてのアスベスト含有製品にこのマークが付いているわけではないため、過信は禁物です。

また、1989年7月以降に一部の生産業者が自主的に「a」マークを付け始めましたが、それ以前の製品にはマークが付いていない可能性があります。屋根の施工箇所や状態によってはマークが確認しにくいこともあるため、次に述べる建築時期や製造番号の確認も重要です。

家を建てた時期から見分ける

2つ目の方法は、建物が建てられた時期を基に判断することです。アスベストは、1970年代から段階的に規制され始め、2004年10月にはアスベストを含む屋根材の製造が全面的に中止されました。そのため、2004年10月以降に建てられた住宅では、アスベストが含まれている可能性はほとんどありません。

具体的には、1975年にアスベストの吹付作業が原則禁止され、さらに2006年9月にはアスベストを含む製品の製造・輸入・使用が全面的に禁止されました。2012年3月には、すべての建材におけるアスベストの使用が禁止されています。したがって、2004年以前に建てられた住宅ではアスベストが含まれている可能性があり、それ以降は基本的に使用されていないと考えてよいでしょう。

ただし、建築時期だけで完全に判断することは難しいため、他の要素と組み合わせて確認することが大切です。

屋根材メーカーや商品名・型番・品番で見分ける

3つ目は、屋根材の製造メーカーや商品名、型番、品番を確認する方法です。国土交通省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」というサイトでは、屋根材のメーカーや商品名、型番を入力することで、アスベストが含まれているかどうかを調べることができます。

このデータベースを活用することで、より正確にアスベストの有無を確認することが可能です。製造年やメーカー名がわかる場合には、特に有効な方法となります。

時期やメーカー・品番がわからない場合

もし、建築時期やメーカー名、品番などが不明な場合は、専門の調査機関に依頼するのが最も確実です。「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ専門業者が、屋根材の種類や図面を基に書面調査や目視調査を行います。必要に応じて、実際にアスベストが含まれているかどうかを確認するための繊維のサンプリングや分析も行われます。

特に、アスベストを含む可能性のある屋根材の撤去や修理を行う際には、事前にアスベスト調査を依頼することが義務付けられています。これは、アスベストが飛散する危険を回避し、安全な作業を行うために重要な工程です。

アスベストが社会問題化した原因について

ここでは、アスベストがどのようにして社会問題となったのか、その背景について詳しく解説します。

そもそもアスベストとは

まず、アスベストとは何かを理解することが重要です。アスベストは、漢字で「石綿(いしわた・せきめん)」と書かれる天然の繊維状鉱物です。アスベストは、非常に細かい繊維構造を持ち、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性に優れており、極めて強靭な特性を持っています。これらの性質により、アスベストは特に建築資材として多岐にわたる用途で使用されてきました。

建築現場では、アスベストは断熱材、耐火材として使われ、スレート屋根や外壁材の材料としても利用されていました。また、その高い保温効果や耐熱性から、工業製品にも幅広く採用されていたのです。しかし、その利便性の裏で、アスベストが引き起こす健康被害が次第に明らかになり、重大な社会問題へと発展しました。

健康被害について

アスベストが社会的に問題視されるようになった最大の理由は、その深刻な健康被害です。アスベスト自体は、静かに存在しているだけであれば、直ちに危険なわけではありません。しかし、アスベストが劣化して繊維が空気中に浮遊することで、人々がそれを吸い込み、健康を害するリスクが生まれます。

アスベストを吸い込むと、肺の中に繊維が蓄積され、長い潜伏期間を経て以下のような疾患を引き起こす可能性があります。

肺がん

アスベスト繊維を吸引した後に発症する可能性があり、喫煙者は特にリスクが高まります。

肺線維症(じん肺)

アスベストの繊維が肺に蓄積することで、肺が硬くなり、呼吸困難を引き起こします。

悪性中皮腫

肺や胸膜、腹膜などを覆う薄い組織にできるがんで、アスベスト曝露との関連が強いことが分かっています。

特に問題なのは、これらの病気が発症するまでに20~40年といった長い潜伏期間があることです。つまり、アスベストを吸い込んだからといってすぐに症状が現れるわけではなく、長年にわたって徐々に健康を害していくため、知らずに被害が拡大するケースが多く報告されています。

アスベストが社会問題化した背景

アスベストは長い間、その利便性から幅広く使用されてきましたが、1960年代から1970年代にかけて、アスベストの健康被害が世界的に注目され始めました。特に、アスベストの生産や加工に従事していた労働者に健康被害が集中し、その深刻さが次第に社会全体に広がっていきました。

日本では1975年にアスベストの吹付け作業が原則禁止され、2004年にはアスベストを含む建材の製造が禁止されました。しかし、その時点ですでに多くの建物や製品にアスベストが使用されていたため、社会全体で対策が遅れ、多くの人々が無意識のうちに曝露してしまっていました。

アスベスト含んだ代表的な屋根材

ここでは、アスベストを含んでいた代表的な屋根材を3つ紹介します。これらの屋根材は、かつて広く使用されていましたが、現在ではアスベストの健康リスクにより生産が中止されました。

ニューコロニアル

「ニューコロニアル」は、1979年から2001年までクボタ(現ケイミュー)によって製造されたスレート屋根材です。アスベストが含まれていたことで、その耐久性が非常に高く、30年以上の耐久性を誇ることから、当時は最も普及していた屋根材の一つです。塗装をしなくても長期間の耐久性が期待できるため、多くの住宅で使用されました。

セキスイかわらU

「セキスイかわらU」は、積水化学工業が製造していた軽量の屋根材です。見た目は伝統的な瓦に近く、軽いという特徴から、全国で50万棟以上の住宅に採用されました。人気が高かったこの製品ですが、アスベスト問題が表面化したことで、アスベストを除去した後継製品が販売されました。しかし、後継品は柔軟性や耐久性が低下し、塗装が剥がれやすいなどのトラブルが頻発してしまい、最終的には製造・販売が終了しました。

アーバニー

「アーバニー」は、2001年から2005年までクボタ(現ケイミュー)が製造・販売した屋根材で、カラーベストシリーズの中でも高級モデルとして位置付けられていました。独自のスリットデザインが特徴で高級感を醸し出していましたが、そのデザインが逆に割れやすく、わずか4年で製造中止に至った製品です。短期間での販売終了もあり、現在ではあまり見かけない屋根材となっています。

アスベスト含有屋根材のメンテナンス方法

アスベストを含んだ屋根をメンテナンスする際は、将来的なリスクや費用も考慮して適切な方法を選ぶ必要があります。ここでは、代表的なメンテナンス方法について説明します。

カバー工法でリフォーム

コストを抑えてリフォームをするなら、「カバー工法」がおすすめです。この方法では、既存の屋根材を撤去せずに、その上から新しい屋根材をかぶせることでメンテナンスを行います。アスベストを含む屋根材を撤去しないため、廃棄費用がかからず、工事期間も短く済みます。通常、5日程度で完了することが多いです。

ただし、アスベストを含んだ屋根材がそのまま残るため、根本的な問題解決には至りません。長期的に住み続ける場合は、今後のメンテナンス費用も含めて検討が必要です。

葺き替え工事も可能だが高額な費用がかかる

「葺き替え工事」は、既存の屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材を設置する方法です。アスベスト問題を根本的に解決するには最も効果的ですが、費用は非常に高額になります。アスベストを含んだ屋根材を撤去する場合、廃棄物処理法に基づき、「特別管理産業廃棄物」として扱われ、専門の手続きと処理が必要です。

アスベストの濃度によって、作業の難易度や廃棄費用が異なり、飛散しやすい場合は作業の慎重さが求められ、より高額になります。このような点を踏まえて、屋根の状態や予算に応じて、慎重に検討することが大切です。

まとめ

今回は、アスベストを含む屋根材を見分ける方法とそのメンテナンスについて詳しく解説しました。

アスベストを含む屋根材を特定するための主なポイントは以下の3つです

  1. アスベストのロゴ「”a”」で確認
  2. 家を建てた時期を確認
  3. 屋根材のメーカーや商品名・型番・品番で確認

もしこれらの方法で見分けられない場合は、専門の調査機関に依頼するのが確実です。

また、アスベストを含む屋根材のメンテナンス方法には主に2つの選択肢があります。

  1. カバー工法
  2. 葺き替え工

どちらの方法を選ぶかは、予算や今後のライフプランを考慮しながら慎重に判断してください。アスベスト問題に関する正しい知識を持つことが、安心して住まいを維持するための第一歩です。

伊藤工芸代表:伊藤博史
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