【スレート屋根】雨漏りが起こった際の症状と修理方法
2023/11/01
住宅の屋根材で最も多く採用されているのは「スレート屋根」です。
スレート屋根は軽量の割に耐久性が高く非常に優れた屋根材ですが、メンテナンスフリーではありません。定期的な点検と修理が必要になります。見つかった不具合を放置すると、雨漏りを引き起こして大切な住宅の寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。
本記事では、スレート屋根についての基礎知識と特徴、点検でチェックするポイントなどについて解説します。雨漏りの修理や屋根や外壁のリフォームを検討されている方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
スレート屋根とは?
スレート屋根とは、セメントと樹脂繊維を混ぜ合わせた基材を5〜6mmの薄い板状に固めて表面に塗装を施した屋根材です。
「カラーベスト」や「コロニアル」と呼ばれることもありますが、これはスレート屋根の大手メーカーであるクボタ(現ケイミュー)の商品名です。
瓦屋根より軽量で大量生産しやすく、施工コストも安いことから高度経済成長期の住宅需要の急増とともに日本全国に広まり、今日まで多くの住宅で使用されています。
その結果、一戸建て住宅では最もシェアが多い屋根材となっています。
スレート屋根の特徴
スレート屋根の特徴は、瓦屋根と比べて軽量であるということです。瓦屋根が1㎡あたり60kg程度とされているのに対してスレート屋根は25〜35kgであるため、約半分の重量になります。
軽量である割に耐久性が高く、適切なメンテナンスをすれば20〜30年は問題なく使用できるとされています。
スレート屋根の施工方法
スレート屋根の施工方法は次の通りです。
①合板あるいは無垢の杉板等で屋根の野地板(のじいた)を施工する
②野地板の上に防水層としてアスファルトルーフィングを敷く
③雨が多く流れる屋根の谷になる部分に、谷板金などの補強板金材を取り付ける
④アスファルトルーフィングの上にスレート屋根材を釘打ちで固定する
⑤屋根の頂点には棟板金、外壁との取り合い部分には雨押え板金を施工して完成
スレート屋根の固定には釘(多くの場合は4本)を使用します。釘穴は防水上の弱点となりますが、水下から釘穴にかぶせるように順番に施工していきますので、表面に釘穴が露出することはありません。
スレート屋根のメリット
軽量である
スレート屋根の最大のメリットは軽量であることです。地震時には住宅が激しく揺さぶられますが、瓦屋根など重い屋根材の場合は建物重量が大きくなる分揺れが大きくなり、建物に与える被害も大きくなってしまいます。
スレート屋根は軽量であるため地震の際に揺れを少なく抑えられ、その分建物の構造材も瓦屋根よりも小さくすることが可能です。その結果として柱や筋交いなどの制約が少なくなり、部屋の間取りを広くし窓を多く設けた明るく軽やかな住宅になります。
ローコスト
瓦屋根は焼き物であるため、生産に多くの時間と手間が掛かります。また、重量物であるため輸送費や現場施工にもコストが掛かる傾向があります。
それに対してスレート屋根は工場での大量生産が可能な上に、板上の形状のため輸送コストも最小限で済みます。施工にクレーンなどの荷揚げ重機も必要とせず、全体としてローコストで高品質の屋根を仕上げることが可能です。
バリエーションが豊富
スレート屋根は多くのメーカーからさまざまな種類の商品が販売されています。色や質感などのデザインバリエーションも豊富で、数多くの選択肢の中からお好みに合わせて選べるということも魅力のひとつです。
高い耐久性
スレート屋根はコンクリートの材料であるセメントを主原料としているため、経年による劣化の進行が遅く、一度施工してしまえば長期間そのままで維持できます。ただし、表面の塗装が無くなると劣化の進行が早くなってしまいます。台風の後には飛来物による割れや強風による浮きや剥がれが発生することもあるため、定期的に点検しておくとより安心でしょう。
スレート屋根のデメリット
ひび割れしやすい
スレート屋根は衝撃に弱く、割れやすいという弱点があります。輸送や施工の際にも材料を曲げて割らないように細心の注意が必要なだけでなく、施工後も飛来物などの衝撃でひび割れ、そこから雨漏りが発生してしまうことがあります。
定期的な塗装が必要
スレート屋根の表面には耐候性の塗装が施してあります。この表面塗装が劣化すると、吸水性のあるセメント基材が水を吸ってしまい、耐久性が急激に落ちてしまいます。そのため、スレート屋根を長持ちさせるためには定期的な塗装メンテナンスが必須と言えるでしょう。
アスベスト含有の可能性
1990年代以前のスレート屋根には、健康被害をもたらす可能性があるアスベストがセメント基材の補強材として使用されているケースがありました。現在の法律ではアスベストは使用禁止となっているため現行の製品は全く問題ありません。万が一アスベストが含有されていたとしても、屋根上にある限りは健康被害のリスクは皆無と言っていいでしょう。
注意しなければならないのは、屋根の解体時です。アスベストが入った建材は作業員や周辺住民に健康被害を与えないように厳重に防護した上で取り外して専門の廃棄物処理施設に持ち込む必要があり、その結果撤去コストが高額になる可能性があります。
スレート屋根の点検ポイントとメンテナンス方法
スレート屋根を長持ちさせるためには定期的な点検とメンテナンスが重要です。
ここでは、スレート屋根の劣化度合いを確認するポイントと修理方法について解説します。
スレート屋根の劣化
一番重要なのはスレート屋根を定期的に目視点検することです。ひび割れや浮き、反りが見られる場合は雨漏りが発生する前に修理が必要です。
また、表面塗装が色褪せたり剥離したりしてセメントのグレー色が見えている場合も要注意です。セメント基材が吸水して劣化を早める恐れがあります。
2階・3階の屋根を住人が目視で点検することは難しいですが、下屋根があれば2階の窓などから屋根の状況が分かります。下屋根に何らかの不具合が見られれば、その上の屋根も同様の状況が発生していることが疑われます。
雨仕舞の劣化
屋根頂点の棟板金や壁取り合いの雨押え板金、谷板金等のズレや腐食、釘の浮きが発生している場合も要注意です。それらの雨仕舞板金はスレート屋根の防水上の弱点をカバーしているものですので、その部材が強風で飛散したり穴が開いたりすれば、住宅内の雨漏りに直結します。
特に棟板金は重要です。現代の多くの住宅では小屋裏の熱気や湿気を排出するために屋根の頂点に通気孔を開けており、棟板金にはその隙間をカバーする役割があるためです。
スレート屋根のメンテナンス方法
スレート屋根のひび割れ
ひび割れが数枚程度であれば、部分的に新品に交換したりコーキング等の止水材で割れ部分を補修することが考えられます。ただし、止水材での防水処理は一時的なものであり長持ちはしません。
屋根全体的にひび割れが広がっている場合は葺き替えやカバーリング工事で新品のスレート屋根に更新することを検討したほうが賢明でしょう。
スレート屋根の浮きや反り
部分的に浮きや反りが見られる場合は釘やビスの再固定で修理が可能ですが、全体的に広がっている場合は要注意です。
下地の野地板が劣化し、釘やビスが効かなくなっている可能性があります。この場合は専門業者にアスファルトルーフィングや野地板の状態まで点検してもらうことをおすすめします。
スレート屋根の塗装劣化
塗装の色褪せや剥がれの場合は、再塗装で修理が可能です。ただし、セメント基材がすでに劣化してボロボロになっている場合はその上から塗装してもすぐに剥離してしまい長持ちしません。塗装による修理は、劣化してからではなく築10年〜20年の間に計画的な修繕工事として実施するべきでしょう。
雨仕舞板金の不具合
棟板金や雨押え板金、谷板金に先述の不具合が見られる場合は早期の修理が必要です。カバー工法で新しい板金をかぶせることが有効ですが、下地の木材が腐食している場合もありますので専門業者に詳細に点検してもらうようにしましょう。
スレート屋根の雨漏りを直すには?
スレート屋根で雨漏りが発生してしまった場合には、原因を特定して適切な修理を行うことが重要です。ここでは、原因別の雨漏り修理方法について解説します。
スレート屋根材の劣化による雨漏り
スレート屋根材自体のひび割れや表面塗装の劣化によって屋根材の裏側に雨水が浸入した場合は、屋根材を固定しているビス穴を伝って雨水が室内に入ることがあります。多くの雨漏りは、原因となる箇所を特定した上で止水材や部分交換、塗装工事などをすることで雨漏りを止めることができるでしょう。
雨仕舞板金の不具合による雨漏り
棟板金や雨押え板金、谷板金の不具合の場合も再固定やカバー工法での対応が必要です。特に台風などの強風雨の際には棟板金の状態に要注意です。下地の腐食が原因で釘やビスが浮いているケースでは棟板金が吹き飛ばされてしまい、棟換気用の穴から直接室内に雨水が入っていることがあります。
下地ルーフィングの劣化による雨漏り
スレート屋根材や雨仕舞板金を修理しても状況が改善しない場合は、下地の防水層であるアスファルトルーフィングが劣化していることも考えられます。
大がかりなリフォーム工事となりますが、一時的に屋根材を剥がしてアスファルトルーフィングを上張りして葺き替え工事をするか、既存の屋根の上にもう一度ルーフィングを敷いてその上に新規の屋根材を葺くカバー工法が選択肢として挙げられます。
▼伊藤工芸で行ったカバー工法の施工実績
まとめ
ここまで、スレート屋根の特徴とメンテナンス方法について解説してきました。
ここで説明したポイントを参考にしていただき、スレート屋根の劣化が見られたら早めに工務店や専門工事業者に点検を依頼しましょう。新築の場合は築10年を経過すると多くの住宅では瑕疵担保保証が無くなりますので、そのタイミングで専門工事業者に屋根上を点検してもらうと安心です。
雨漏りや屋根の修理は、普段馴染みがないため、いざ修理を頼もうと思ったらどこに頼んでいいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか?
伊藤工芸は静岡県浜松市を中心に、雨漏り修理を得意とする地域密着の工務店です。浜松市で雨漏り修理や屋根のことでお悩みの方は、伊藤工芸までお気軽にご相談ください。