屋根の「役物」とは?種類や役割を解説
2024/02/01
屋根には様々な部位があり、その中でも特に重要な要素として「役物」があります。
役物は、屋根の端部分や棟など、特殊な箇所で使用される建材です。通常、屋根本体と同じ素材で作られています。
本記事では、屋根に欠かせない役物の機能と種類について詳しく見ていきましょう。
これから役物の基礎知識をご紹介しますので、屋根工事やリフォームの参考としてお役立てください。
屋根における役物の主な機能
屋根に使用される役物には、重要な機能がいくつかあります。それぞれの機能について詳しく見ていきましょう。
確実な防水性能
役物の最も重要な機能は、雨水の侵入を防ぐことです。特に「屋根の先端部」や「棟」など、形状が変化する箇所は雨漏りが起きやすい場所です。そのため、役物には高い防水性能が求められます。
構造的な安定性
屋根材の端部は強風の影響を受けやすく、適切な固定が不可欠です。役物は端部をしっかりと覆い、屋根材の浮き上がりや損傷を防止します。
なお、役物は設置後に固定部分が見えなくなるため、施工中の入念な確認が必要となります。
デザイン性の向上
役物は屋根の目立つ位置に取り付けられるため、建物の外観に大きな影響を与えます。屋根本体と異なる色を選んで個性を演出したり、すっきりとした納まりにすることで洗練された印象を作り出すことができます。
屋根における役物の種類と役割
ここでは、屋根に使用される主要な役物について説明していきます。
棟包(むねつつみ)
「棟包」は屋根の最上部を保護する重要な役物です。屋根の頂点部分(棟)では複数の面が交わるため、雨水の侵入を防ぐ必要があります。
「棟板金」という名称でも知られ、頂点から軒先へ向かう部分は隅棟(差し棟・降り棟とも呼ばれます)として設置されます。
固定には釘やビスを使用しますが、時間とともに緩みが生じる可能性があり、強風時の飛散リスクに注意が必要です。また、板金素材のため、定期的な塗装メンテナンスが欠かせません。
剣先(けんさき)
「剣先」は隅棟の端部を仕上げる役物として使用されます。90度に折り曲げて取り付けられ、建物の形状に合わせた現場加工が必要なため、高度な技術力が求められます。材質は隅棟と同じ板金を採用しています。
唐草(からくさ)
「唐草」はケラバ(切妻屋根の端部)に取り付ける防水用の役物です。この部分は特に雨水の侵入リスクが高く、軒天井の保護に重要な役割を果たします。
名称の由来は、かつての瓦に施された唐草模様に関係しており、現代では水切り用の板金部材を指します。
棟巴(むねともえ)
「棟巴」は棟とケラバの接合部を保護する役物です。屋根材によって使用する素材が異なり、スレートや金属屋根では板金製、瓦屋根では専用の棟巴瓦を使用します。
雨押え(あまおさえ)
「雨押え」は屋根と壁の接合部(取り合い部)に設置する防水用の役物です。この部分からの雨水侵入を防ぐため、板金による適切な処理が不可欠です。
鼻隠し(はなかくし)
「鼻隠し(はなかくし)」は軒先部分に取り付けられる重要な役物の一つです。この部材は雨樋の取り付け基礎となり、同時に屋根の構造部材を見えないように隠す美観上の役割も担っています。
設置位置はケラバに類似していますが、雨樋の有無で見分けることができます。鼻隠しがある箇所には必ず雨樋が設置されています。
ケラバ
切妻屋根や片流れ屋根において、ケラバは外壁から張り出した屋根の端部を指します。屋根の傾斜面が終わる部分を「軒」と呼び、その両端部にはケラバと破風、そして軒部分には鼻隠しが設置されます。
見分け方として、雨樋が設置されているのが軒先で、設置されていないのがケラバという特徴があります。寄棟屋根や方形屋根では、全ての面に雨樋が必要なため、ケラバは存在しません。
鬼瓦(おにがわら)
「鬼瓦(おにがわら)」は棟の端部を飾る装飾瓦です。かつては邪気を払う目的で鬼面の装飾が一般的でしたが、現代では柔らかい印象の雲模様や植物模様が好まれています。
固定には漆喰や銅線を使用しますが、年月とともに劣化が進み、位置がずれたり落下の危険性が出てきます。安全性を確保するため、漆喰は10年程度で補修し、同時に固定用の銅線も交換することが推奨されています。
まとめ
屋根の役物について、その機能と種類を詳しく解説してきました。
各役物は防水性、構造補強、美観など、それぞれが独自の重要な機能を担っています。
特に屋根の端部や接合部など、天候の影響を受けやすい箇所には、適切な役物の設置が不可欠です。
定期的な点検とメンテナンスを行うことで、役物の性能を長く保つことができます。屋根全体の点検時に合わせて確認することをお勧めします。
さらに、役物は建物の外観デザインにも大きく影響するため、機能性と共にデザイン性も考慮して選択することをお勧めします。